第2回 時代の羅針盤 開催レポート公開
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本レポートは2025年9月11日(木)に開催された「不確実な時代の未来指針を示す羅針盤セミナー」シリーズ第2回〈時代の羅針盤~近代とは何か?時代は何を希求するのか?~〉の内容を、主要な論点にフォーカスして再構成したものです。
当日は、作家/元外務省 主任分析官の佐藤優氏、シブサワ・アンド・カンパニー(株)
代表取締役の渋澤健氏、大阪大学 大学院経済学研究科 教授の安田洋祐氏をお招きし、アミタホールディングス(株)の代表取締役会長 兼 CVO 熊野がナビゲーターを務めました。
現代の資本主義が直面する「安定的な資本調達の限界」、「格差拡大や高齢化などの社会的な限界」、「拡大市場経済の限界」といった3つの限界を踏まえ、政治、金融、経済の3つの軸から、時代の羅針盤となる議論が繰り広げられました。
第一部:ショートインプット
佐藤 優 氏 政治の羅針盤
(作家/元外務省主任分析官)
佐藤氏は、豊富な外交経験と知見から、現在の世界情勢を歴史的転換点と捉え、「トランプ革命」という視点から政治の羅針盤を提示しました。

「トランプ革命」とグローバリゼーションの終焉
佐藤氏は、現在の世界の変化を、1917年のロシア革命、1930年代のファシズム・ナチズムの革命に比肩する歴史的転換点として「トランプ革命」と位置づけています。グローバリゼーションは既に終焉し、各国は自国利益を最優先する時代に回帰したと分析。「グローバルサウス」も、実際には国境による制約があるため「サウス・インターナショナル」と呼ぶべき国家間関係だと指摘しました。
この現象の理論的背景として、19世紀の経済学者フリードリヒ・リストの『政治経済学の国民的体系』において展開されている国家が関税で自国産業を保護すべきという考え方を紹介。自由貿易を重視するアダム・スミスとは対照的なこの理論が、トランプの保護主義政策と一致するため、トランプ革命は時代の流れの「結果」として現れたとの見方を示しました。
ロシア・ウクライナ戦争に見るアメリカの弱体化
佐藤氏は、同戦争を通じ、アメリカ国民の深層にあった自国の弱体化が現実として認識されたと分析しています。ロシアのGDPはアメリカのわずか8%に過ぎないにも関わらず、物量戦では、西側連合が劣勢である実態を指摘。
軍事技術の格差も深刻で、ロシアが実用化したキンジャールミサイル(音速の11倍)やサルマートミサイル(射程3万km)により、アメリカの空母打撃群がロシア沿岸に近づけず、米国に対する南極周りでのミサイル攻撃に対しても、防衛体系は無力だと述べました。
この状況を受けて西側連合は「長期戦でロシア経済を破綻させ、民衆蜂起によってプーチン政権を倒す」という戦略を立てましたが、エネルギーと食料を自給している国を経済封鎖で倒すことは不可能だと論じています。
思想戦における価値観の対立と日本政治の変化
佐藤氏は、このような状況を「思想戦におけるアメリカの敗北」と捉えています。キンジャールやサルマートを開発するロシアのエンジニアは、国外で働けば年収3-5億円も見込めるにも関わらず、実際には年収700-1000万円でも国家からの感謝を喜びや価値として働き続ける事例を挙げ、金銭で動く西側連合とは根本的に異なる思想的背景があると指摘しました。
また、日本の内政については包括政党(幅広い有権者から支持を集める大政党)の機能不全を踏まえ、今後は相対第一党が4-5党との連立を組む時代になると予測しました。参政党に対する「排外主義者」「ファシスト」といったレッテル貼りは、かえってこの人たちを望ましくない方向に追い込む危険があると警告。排除ではなく、官僚がこうした政党に対し、専門知識を提供して建設的な関係を築くことが重要だと訴えました。
渋澤 健 氏 金融の羅針盤
(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役)
渋澤氏は、長期投資に携わった経験から、日本が新しい時代に入ったという確信のもと、30年周期理論と人口動態変化を軸に金融の羅針盤を示しました。

日本の歴史と時代の転換点
渋澤氏は、15年前にコモンズ投信を立ち上げる際に見出した日本の30年周期の持論を展開しました。明治維新以降、日本は30年の繁栄と30年の破壊を交互に繰り返してきたと分析。1870-1900年の明治維新による破壊の時代、1900-1930年の日露戦争後の繁栄の時代、1930-1960年の戦争による破壊の時代、そして、1960-1990年の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」による繁栄の時代というパターンを提示。1990年代以降の30年間を「失われた30年」ではなく「破壊の30年」として再定義し、コロナパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻など「破壊」を経て、2020年以降は以下の現象から新しい時代に入ったという確信を示しました。
人口動態の激変と「行動しないコスト」
渋澤氏は、日本の人口動態は昭和時代のピラミッド型社会から、平成時代の団塊世代中心のひょうたん型社会を経て、2020年以降は逆ピラミッドに急変したと分析。この激変により、従来の「行動しないリスク」を可視化する「行動しないコスト(Cost of Inaction)」が重要になると強調しました。企業は事業モデルの根本的変革と実行を迫られていると指摘しています。
新成長モデル「メイド・ウィズ・ジャパン」への転換
渋澤氏は、昭和の「メイド・イン・ジャパン」(大量生産で大成功、ただアメリカからバッシング)、平成の「メイド・バイ・ジャパン」(現地生産という合理的な展開になったが、バッシングからパッシングへ)を経て、令和は「メイド・ウィズ・ジャパン」という新たな方向性を提唱しました。これは「日本と共に豊かな生活、持続可能な社会を作る」パートナーシップ型の価値創造で、特にアフリカ、インド、インドネシアなど人口増加国との協働が鍵になると考えています。そして、日本人口が減り続けても、多くの国々が日本との協働を意識できれば、新たな成功体験を築けると期待を示しました。
安田 洋祐 氏 経済の羅針盤
(大阪大学 大学院経済学研究科 教授)
安田氏は、ゲーム理論とマーケットデザインの専門家として、ハラリの資本主義論を援用しつつ、現代資本主義の機能不全と新たな投資概念について経済の羅針盤を提示しました。

資本主義の規範的意味と現状
安田氏は、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を引用し、資本主義を「生産活動と利益のサイクルが短期間で回転し続ける世界」と定義しました。そして「生産活動→利益→再投資」のサイクルにおいて、生産活動に再投資される富を「キャピタル」、戻らない富を「ウェルス」と区別し、「キャピタルを生み続けるべき」という規範が資本主義の「イズム」だと説明します。
しかし現在、この「イズム」が機能不全に陥っていると指摘。具体例として、超低金利の継続やそれに伴う資金余剰、利益の自社株買い・内部留保への偏重、資産市場や暗号資産への投機活発化を挙げました。本来は生産に向かうべき資金が高収益の投機へ流れ、危機的状況にあると警鐘を鳴らします。
資金循環の停滞と消費型投資の可能性
安田氏は、資本主義の「イズム」を取り戻す方法として「消費型投資」の可能性を提唱しました。これはファンエコノミー、インパクト投資、クラウドファンディングなどに共通する、金銭的リターンを主な目的とせず、地域経済の支援、女性活躍、環境改善といった社会貢献や地域活性化などの非金銭的な満足感を得ることを動機とする投資の形です。
貨幣の概念変革と未来の経済システム
安田氏は、資本主義の「価値の自己増殖」メカニズムがうまく働いていない現状を踏まえ、なぜ資本主義が高速回転するようになったかを3段階で分析しました。
第一段階「信用の発生」…手元に資金がなくてもアイデアがあれば出資を受けてビジネスを始められるようになり、資金の持ち手とアイデアの分離が可能になった
第二段階「有限責任制度」…本制度の導入により一定の損切りができるようになった
第三段階「消費欲求の無限化」…お金の保有自体が目的となり、消費欲求が有限から無限に変化した
これらの資本主義の高速化に対するカウンターリアクションとして、贈与経済、協同組合、脱成長といったキーワードが昨今提案されているとの見解を示しました。
第二部:パネルディスカッション
第二部では、ショートインプットを踏まえ、テーマ「人類史上初の超長寿、三大限界、ブロックチェーン/生成AI/量子コンピュータ等の技術が交錯する新時代の羅針盤とは?」について、登壇者3名とナビゲーターによるディスカッションが行われました。

論点1:ナショナリズム回帰と第一次世界大戦の未処理の宿題
ナビゲーターの熊野からの「冷戦後のグローバル化で民間主導の国際基準(ISO/SDGs/ESG等)が形成されたが、佐藤氏が指摘した思想戦での米露の構図を経て、世界は戦前のナショナリズム時代に回帰するのか?」という問いで、議論が開始されました。
• 佐藤氏の発言要旨:
第一次世界大戦の歴史的影響は過小評価されていると指摘。18世紀の基調は啓蒙主義的思想で、理性とテクノロジーによって理想社会を実現できると信じられてきたと主張しました。同大戦後に量子力学、シュルレアリスム、ゲーデルの不完全性定理、ハイデッガーの存在論などでパラダイムシフトを経験するも、第二次世界大戦はアメリカの物量戦で終結し、啓蒙主義的思想が継続されました。しかし、ロシアとウクライナの戦争を契機にその有効性が問われ、現在の諸課題は第一次世界大戦後の未処理の宿題だと指摘しました。また、重商主義時代は国家介入が強く、自由主義時代は介入が極小化、社会主義崩壊後は規制緩和と、ヒュームの振り子理論のように循環的に変化していると述べました。
論点2:金融システムの変容と貨幣の新機能
「金融の世界は振り子の往復では説明しきれない局面に入ったのではないか。電子マネーのような循環型の交換システムを使用する際に、国か企業かどちらを信用しているか比べて使うことはない。金融の世界においても関係性や循環性を重視する新しい形が始まっているのではないか。」という問いがナビゲーター熊野より共有されました。
• 渋澤氏の発言要旨:
国内外の金利変動は「資金余剰」に起因すると分析。過去10~20年の財政・金融政策、特に日本の量的緩和(市場に大量の資金を供給する政策)により、大量の資金が市場に供給され、これらの政策は社会のニーズに応える意図を持つものの、貧困層へ行き渡った資金は消費に回され資産として残りにくい傾向が見られると主張しました。結果として、富裕層に資金が集中し、経済格差を拡大させていると指摘。電子マネーや暗号資産(クリプト)の普及がこの資金供給量をさらに増加させるという課題を示しました。
• 安田氏の発言要旨:
貨幣に依存しない経済システムの観点から、資本主義の行先について言及しました。貨幣の起源について、デイビッド・グレーバーの『負債論』を引用し、貸し借りを記録する「帳簿」から生まれたという説が有力であると示唆。将来はビッグデータやAIによって「記録型」の貨幣に回帰する可能性や、個々人の交換意向を、現金を介在させずアルゴリズムで多者間の合理的交換を実現する「物々交換」の可能性に言及しました。しかし、実用上の課題として、理論的には多者間の複雑な交換サイクルが構築可能であるにも関わらず、参加者の離脱により系統全体が破綻するリスクがあると指摘。数パーセントの離脱率でもシステムが破綻する可能性が高く、この脆弱性を解決する破綻を防ぐメカニズムの構築が重要な研究課題であると述べました。
• 佐藤氏の発言要旨:
交換システムからの離脱問題について、古代ローマ法の「離脱の自由と応分の責任」という原則に基づくと、自発的に離脱を抑制する行動が生じ得ると述べ、これはロシアや中国の経済の特徴でもあると分析。さらに現代の懸念として「金融が強い国家が戦争に勝てるか」という問題を提起し、エンジニア比率(米国8%、日本18%、ロシア25%)を例に、経済的優位が必ずしも軍事的優位を意味しないことを指摘しました。こうした議論が過去3年間でタブー視されなくなってきたことに、不穏な変化の予兆を感じると述べました。
• ナビゲーター熊野の発言要旨:
第一次世界大戦、パンデミック、恐慌期に不安がピークに達し、国民が「国家国民」を選択したように、現在の不安はデジタル空間へ向かっていると指摘。AIやブロックチェーンという新たなルールメイキング技術が誕生し、生産性の定義が「労働×資本」から「生成AIが作る価値×資本」へ変化する可能性を提示しました。価値の源泉がデータ、見立て、動機性になる世界では、信頼に基づく交換が取引コストやコンプライアンス負担を減らし得ると論じました。また、ブロックチェーンによる透明性と金融の複線化により、環境価値などの質的情報を含む新たな交換様式が生まれる可能性も示しました。
• 渋澤氏の発言要旨:
暗号通貨が通貨として機能するには2つの必要条件があると主張しました。
価格の安定性 価格変動が激しいと、投機対象としては面白くても「通貨」としての役割を果たせず、受け取った瞬間に価値が大きく上下してしまっては決済手段として破綻してしまうと述べました。
信用の確立 日本円を信じられるのは、日本政府への信用が背景にあるから。暗号通貨も同様に、その仕組みや担保を「信用」できなければ通貨として成立しない。つまり、ブロックチェーン等の仕組みを一般の人々が理解・説明できていない現状では、真の透明性が確保されているとは言えず、暗号通貨が本流になるには信用面での大きな課題があると結論付けました。
論点3:不安社会における人間観とは
最後にナビゲーター熊野が、「不安や危機の時代において、人は人をどう見るべきか。これからの人間観をどう考えれば複雑化・拡散する社会を収束させることができるか」についての見解を求めました。
• 佐藤氏の発言要旨:
現代の複雑なシステム(ブロックチェーン、AIなど)を全て理解するのは困難であり、人々は理解できないことを「誰かが説得してくれる」「信頼できる人に委ねる」ことで複雑性を削減すると指摘。カルヴァン派の予定説やトランプ大統領の「メンバーシップ・オンリー」の思想は、根源的な信頼と選民意識に根ざしており、複雑な問題を解決する上で強大な力を持つ可能性があると述べました。また、錬金術師を引き合いに「信じること」が現実を動かす力を持つ場合があるため、複雑な状況においては検証や批判的思考が不可欠であるとも強調しました。
• 安田氏の発言要旨:
混迷する世界で個人がどう生き抜くか、社会全体がどうあるべきかを切り離して考えることの重要性を指摘しました。社会心理学者の山岸俊男氏の提唱する「安心社会」と「信頼社会」の概念を引用し、日本は「安心社会」であり、顔の見えるコミュニティ内での規範に従うことで安心感が得られる一方、見知らぬ人への協力には消極的であると述べました。これに対し、欧米などの移民国家は「信頼社会」であり、まず相手を信頼して助けることから関係性が築かれるとしました。どちらの社会形態も一長一短があるが、日本においては、企業やコミュニティがより良い安心社会を築くことが、ボトムアップで経済を下支えする可能性を秘めていると述べました。また、日本人は「罪」よりも「恥」の意識によって行動を自制する傾向があることを指摘し、社会規範の維持の仕方が国によって異なることを意識しながら行動すべきであるとしました。
• 渋澤氏の発言要旨:
異質なものを混ぜ合わせ、新しい価値を創造する日本人の特徴を「カレーうどん」に例え、「いい加減」(良い加減)な力があると述べました。金融業界など各分野に存在する規制や壁が、この創造性を阻害している可能性があると指摘し、今後は集中と選択による効率化だけでなく、多様な要素を組み合わせることで新しい価値を生み出す「カレーうどんのようなイマジネーション」が個人、企業にとって重要であると提言しました。特に、混沌とした時代において、日本は欧米だけでなく様々な国と柔軟に付き合う必要があり、「和の精神」を世界に発信すべきだと強調しました。
Q&Aセッション
Q1:企業の「提供価値」と「対価」はどう整合させる?
「差別化された価値を持つ製品・サービスでも、市場慣行や制度設計により対価が画一化され、正当に評価されにくいと指摘。企業がこの状況をどう打破すべきか」といった質問が出ました。
渋澤氏の発言要旨:
価値と価格を峻別することの重要性を強調。価格はその時々の市場で決まるが、価値は短期/長期、経済/社会などが交差するため多元的で、唯一解は無いと述べました。ゆえに企業は、経済・社会・環境・人的の四側面で自社の価値仮説を明確に意思表明し、情報開示(可視化)を通じて検証の土台を整えるべきだと述べました。
ナビゲーター熊野の発言要旨:
価値提供は対価獲得に還元できない領域(従業員の動機づけ、信頼、ケイパビリティ)を含むと指摘。市場価値のみに囚われず、企業のパーパス(存在意義)に基づいた価値創造が重要であるとしました。
安田氏の発言要旨:
コスト起点の価格設定から、需要・選好を反映した戦略的プライシングへの移行を提言し、文豪ゲーテが相手から本音価格を聞き出すために用いた交渉術も紹介しました。これは、自己の希望価格を事前に伏せて提示し、先方提示がそれ以上なら自身の希望価格で成約するという方式で、適切価格を引き出す巧妙なゲーム理論的アプローチであると解説しました。
Q2:日本は「唯一無二」か?
「海外と比較し、日本の商習慣・サービス・ストレスの少なさは稀有であり唯一無二の国だと実感。日本に類似する国、あるいは日本が今後の範とすべき国はあるか」という問いが出ました。
渋澤氏の発言要旨: 日本のような国は存在しないと持論を展開。その背景として日本の金融資産、食文化、水資源の豊かさを挙げました。特に水は宗教観や社会規範にも影響を与え、欧米のゼロサム的な宗教観との違いを生んだ可能性があると指摘。日本が守るべきは「和の精神」であり、多様な意見を尊重しながら落とし所を見出す姿勢こそ、混沌とする世界が日本から学ぶべき点ではないかと提言しました。
佐藤氏の発言要旨:
この問題意識は南北朝期の北畠親房『神皇正統記』にも通じると指摘しました。易姓革命が東アジアの普遍法則である中で、親房は、日本は「幹が腐れば枝が幹となる」という独自の変容様式を持つと説いたと紹介。そして柄谷行人氏が論じたように、日本が中華帝国の亜周辺に位置したという地政的関係が選択的な文明受容を可能にしたと説明しました。また、親房が「あらゆる宗教・学芸を尊重せよ」と説いた知的寛容性が、日本の永続性を担保してきたと強調しました。ここから、日本は、外来の知を土着化させつつ、移民や他文化に対しても寛容であるべきだと提言しました。
安田氏の発言要旨:
日本は住みやすく成熟しているが、それ故に停滞も抱えている側面もあると指摘。自身のリスボン大学での研究生活を踏まえ、ポルトガルを日本の参考例に挙げました。治安や食文化の親和性に加え、「サウダージ(郷愁)」という精神性は日本の「侘び寂び」とも通じると紹介。大航海時代から数百年を経ても過去に固執せず、小国として自らの文化を誇りつつ文化を維持しているポルトガルの姿勢は、日本にとって「衰退の仕方」を学ぶ上で示唆的であると論じました。
第三部:結論
ナビゲーター熊野の総括要旨:
本セミナーの結論として、日本は東洋と西洋の経験を持つ独自の立ち位置から、複雑で混沌とした社会を乗り越える可能性が示されました。自然から学ぶ動的平衡と「カレーうどん」に象徴される、異質なものを融合し新たな価値を生み出す「編集力」は、先人から受け継がれた知恵であり、今こそ高度な議論を通じて再評価すべきとしました。そして、企業は自社のケイパビリティ維持に留まらず、良好な関係性を基盤に取引コストを削減する編集力を発揮することで、日本は新たな創造的価値を牽引し、未来を切り拓くことができると述べました。

次回以降も、企業が新たな経営秩序を切り拓くための「未来指針」をともに考える機会として、多くの皆様のご参加をお待ちしております。
羅針盤セミナー 第3回のご案内
【テーマ】未来の羅針盤 ~カオスの大海を、経営者はいかに航るのか?~
【日時】2025年11月7日(金)16:00~18:00
【登壇者】
田中 優子 氏 (法政大学名誉教授・元総長 江戸東京研究センター特任教授)
水野 祐 氏 (法律家/弁護士 シティライツ法律事務所)
中村 寛 氏 (文化人類学者/デザイン人類学者 多摩美術大学リベラルアーツセンター/大学院教授)
【ナビゲーター】熊野 英介(アミタホールディングス株式会社 代表取締役会長 兼 CVO)
【対象】
会場参加:企業経営者(完全招待制)
オンライン参加:経営企画、R&D、調達・サステナビリティ部門等の責任者・ご担当者
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